その不眠が引き金となったのか、ついに仕事中に決定的な出来事が起こる。
それは、都内にある仕入会場で入札中の時だった。
突如、動悸、冷や汗、眩暈、貧血に似た症状が彼女を襲った。
あの時の、感覚が脳裏に蘇る・・・。
彼女は「やばい」と思った。
10年ぶりにパニック発作が起きてしまったのだ。
腕を揉んだり、飴をなめて必死に気を紛らわした。
その日の帰り、電車に乗るのがすごく恐くなっていた。
電車に乗らないと会社にも迷惑もかかる状態だったので、一か八か死ぬ思いで電車に乗った。
これまでも、まったく兆候がなかったわけではなかったが、この日を境にパニック発作が頻発するようになってしまう。
「電車」、「飛行機」、「バス」、「タクシー」、「映画館」、「プラネタリウム」、「カラオケ」、「レストラン」、「遊園地の乗り物」、「行列」などがまた苦手になってしまった。
パニックに怯える生活が半年くらい続いて、騙し騙しやってきたが、仕事に対する思い、洋服への興味が薄れていってる事に気付いた。
「なんでできないんだ」
「今までできていた事ができなくなった」
「好きだったものが好きでなくった」
自分を攻める毎日。
自己嫌悪な毎日。
自己否定の毎日。
毎晩泣いた。
彼女は、何度も何度も退職を申し出ていた。
しかし、それが受理される事はなかった・・・